〈 RFIDタグ 〉

RFIDタグ

1.タグの種類

RFIDのタグは電源の有無や通信方法によってパッシブ、アクティブ、セミパッシブのタイプに分類されます。

  • パッシブ

    パッシブ

    パッシブタイプは電源を持たず、RFIDリーダーライタの電磁波を受けて動作します。
    小型・軽量でコストが安く、バッテリー不要のため半永久的に使用できます。
    通信距離は比較的短いですが、物品管理や入退室管理など多くの用途で使用されています。

  • アクティブ

    アクティブ

    アクティブタイプは電源を内蔵します。数十メートルから数百メートルの長距離通信が可能ですが、電池寿命があるため一般的に数年で交換が必要です。
    パッシブタイプより高価ですが、広範囲のモニタリングや高精度な位置追跡に適しています。

  • セミパッシブ

    セミパッシブ

    セミパッシブタイプは電源を内蔵していますが、通常時は自ら電波を発信しません。
    通信距離とコストはパッシブとアクティブの中間ぐらいです。
    温度センサー付きのタグなどスマートメーターといった、特殊な機能を持つ用途に使用されています。

2.RFIDタグの構成要素

RFIDタグはICチップ、アンテナ、封入材等から構成されます。

RFIDタグ

  • ① ICチップ(集積回路)

    RFIDタグの脳にあたる部分で、メモリ、通信機能などが組み込まれています。
    データの処理や保存およびRFIDリーダーライタとの通信制御を行い、ICチップの性能によって処理速度や保存できる情報量が決まります。

  • ② アンテナ

    RFIDリーダーライタと通信するための電磁波の送受信を行います。
    タグの種類や使用周波数によって、アンテナの形状や大きさが異なります。アンテナの適切な設計が通信距離や読み取り精度に影響します。

  • ③ メモリ

    メモリはICチップ内にあり、RFIDデータであるタグの固有ID(TID)やユーザーデータを保存および格納します。容量は数ビットから数キロバイトまで用途により様々です。

    メモリタイプ: EPC)ユーザーが自由に読み書きできる領域
    USER)EPCと同様、EPCの補助的な役割
    TID)書き込み不可、読み取りのみ
    RESERVED)ロック機能や無効化機能など特殊用途の領域
  • ④ 封入材

    RFIDを物理的に保護し耐久性を向上させる素材です。
    環境(衝撃や湿気など)からタグを保護します。用途に応じてプラスチック、樹脂、ガラス、セラミックなど様々な材質が選択されます。

  • ⑤ その他

    アクティブタイプやセミパッシブタイプのタグには内臓電池やクリスタルオシレーターなども含まれる場合があります。
    クリスタルオシレーターはRFIDタグが安定動作を行うための正確な周波数を生成し、通信精度を向上させ安定した通信をサポートします。

3.タグ

RFIDタグのサイズ、形状、材料について説明します。

タグ

① 形状

RFIDタグには様々な形状があり、主に以下のように分類されます。

ラベル型 シール状のタグで商品などに貼り付けて使用します。
軽量で安価なため在庫管理などに広く使用され、単回使用(使い捨て)の場合が多いです。
コイン型 円形のプラスチック製タグで耐久性があり、繰り返し使用する場合が多いです。
バンド型 腕や製品に巻き付けて使用します。
病院での患者管理や入退室管理などに活用されています。
ハードタグ 金属面に貼り付けても安定した読み書きが可能なタイプ、高温や薬品に対する耐性があるタイプ、など特殊な用途に使用する場合が多いです。

② サイズ

RFIDタグのサイズは用途に応じて様々です。

ラベル型 20㎜から100㎜程度の長方形が多い
コイン型 直径30mm程度
バンド型 手首に巻き付けられる程度のサイズ
ハードタグ 用途によりサイズは異なる

※アンテナサイズが大きいほど通信距離が通常は長くなりますが、設置スペースや用途に合わせて選択する必要があります。

③ 材料

RFIDタグは使用環境や性能要件に応じて様々な材料が使用されています。

一般環境 紙やPET(ポリエチレンテレフタレート)などの軽量で安価な素材
特殊環境 プラスチック樹脂、セラミック、金属など用途により素材選定

※材料選択は価格、耐久性、用途に大きく影響するため、使用環境を考慮して適切に選ぶ必要があります。

〈 RFIDタグ 〉

1.リーダーの基本的な機能

RFIDリーダー(リーダーライタ)の基本機能について説明します。

  • ① RFIDタグの読み取り

    RFIDリーダーはタグと無線通信を行い、タグ固有のIDやデータを読み取ります。
    多くのリーダーは読み取りだけでなく、タグへの書き込み機能も備えているため「リーダーライタ」と呼ばれます。

    RFIDタグの読み取り

  • ② 無線通信

    RFIDリーダーとタグ間の無線通信は、使用周波数帯により以下に分類されます。
    周波数が高いほど通信距離とデータ転送速度が向上しますが、障害物の影響も受けます。

    LF帯
    (中波帯:135kHz以下)
    近距離通信(約10cm)
    金属や水の影響を受けにくい
    HF帯
    (短波帯:13.56MHz)
    中距離通信(約50cm)
    ISO標準規格で広く普及
    UHF帯
    (超短波帯:920MHz)
    長距離通信(約5~10m)
    高速データ転送が可能
    マイクロ波帯
    (2.45GHz)
    長距離通信
    高速データ転送だが障害物の影響を受けやすい
  • ③ タグ識別

    RFIDタグのID情報を読み取り、個々のタグを識別します。複数タグが同時に存在する場合でも、アンチコリジョン機能により個別に識別できます。
    これによりバーコードとは異なり、一括読み取りが可能になります。

    タグ識別

  • ④ データ処理

    RFIDタグから読み取った製品の位置や状態などの情報を処理し、トラッキングや在庫管理に活用します。
    取得データは分析システムと連携して、在庫最適化や不良率低減に役立てられます。

    データ処理

  • ⑤ リアルタイム追跡

    RFIDリーダーの設置場所を工夫すればRFIDタグを取り付けた製品などの位置情報をリアルタイムで追跡できます。
    例えば、生産ラインなどの各段階で製品の動きを把握し、遅延やトラブルを未然に防止します。
    これにより生産状況の可視化と効率化が実現します。

    リアルタイム追跡

  • ⑥ 複数タグの同時読み取り

    RFIDリーダーは複数タグを同時に読み取れるため、商品や部品の棚卸作業を大幅に効率化できます。
    バーコードと異なり視認や個別スキャンが不要で、段ボール箱など梱包状態でも内容物を識別可能です。

    複数タグの同時読み取り

2.リーダーの種類

RFIDリーダーは用途や設置環境により様々なタイプがあります。

リーダーの種類

固定型リーダー

固定型(据え置き型)RFIDリーダーは特定の場所(棚、門、コンベアベルト、倉庫出入口など)に設置して使用します。
常時監視が必要な場所に適しており、在庫管理やトラッキングに広く利用されています。
製品の移動を自動的に記録し、人手を介さず継続的にデータ収集が可能です。
出入口に設置することに適したゲートタイプなど、複数の形状があります。

ハンディ型リーダー

ハンディ型RFIDリーダーは手持ちで使用するタイプです。
バッテリー駆動で、作業者が移動しながら柔軟に使用できます。
倉庫の在庫確認やピッキング作業など、移動を伴う業務に適しています。
バーコードリーダーと一体化されている機種もあり、RFIDとバーコードの両方の読み取りが可能です。

ポータブル型リーダー

ポータブル型RFIDリーダーはハンディ型より小型軽量で携帯性に優れています。
バッテリー駆動で、どこでも使用可能です。製造現場や建築現場など、移動が多い環境で使用されます。
小型ながらも堅牢な設計で、過酷な環境でも使用できるモデルが多くあります。

内蔵型リーダー

内蔵型RFIDリーダーは各種機器や製造装置、設備に組み込まれて使用されます。
機器の外側からはリーダーの存在がわからず、機器と連動して機能します。駅の自動改札機、自動販売機、入退室管理システムなどに統合されることが多く、専用設計されているため設置スペースを取らない利点があります。

3.読み取り範囲と精度

RFIDの読み取り範囲と精度はタグの種類、通信周波数、環境条件によって大きく異なります。

① 読み取り範囲

RFIDタグの読み取り距離は主に使用周波数とタグタイプにより決まります。
パッシブタイプの場合、以下の読み取り範囲になります

  • •近距離型RFID:

    o LF帯(135kHz以下):数cm
    o HF帯(13.56MHz):50cm以内
    →ICカードや入退室管理用IDカードなどに使用

  • •長距離型RFID:

    o UHF帯(920MHz):数m程度(環境による)
    o 2.4GHz帯:1m程度(環境による)
    →物流管理や在庫管理など広範囲の読み取りが必要な用途に適している

② 読み取り精度

RFIDの読み取り精度に影響が出るポイントについて説明します。

距離

RFIDタグとリーダーの距離が短いほど、読み取り精度が高くなります。

タグの種類

パッシブタグよりアクティブタグの方が、長距離での精度が高くなります。

アンテナ設計

タグのアンテナ設計は読み取り精度に影響します。

環境条件

金属や液体が近くにあると、信号の反射や吸収により精度が低下します。

角度

RFIDタグとリーダー間は直線的に配置されている方が精度は良いです。

電波干渉

他のRFIDシステムや電子機器の電波干渉が精度に影響を与える可能性があります。

〈 RFIDアンテナ 〉

1.アンテナの役割と種類

RFIDアンテナの役割と種類について説明します。

  • ① 役割

    1. 信号の送信:

    RFIDリーダーライタから発信された無線信号をRFIDタグに届けます。

    2. 信号の受信:

    RFIDタグから送信された応答信号を受け取ります。

    3. 通信範囲の確保:

    タグとリーダーライタ間の通信範囲を広げ、効果的なデータ交換をサポートします。

  • ② 種類

    円形偏波アンテナ:

    電波がらせん状に回転しながら送信するタイプで、タグの方向に関わりなく、広い角度で安定した読み取りが可能なアンテナです。
    直線偏波に比べ読み取り距離は短いですが、範囲は広い特長があります。

    直線偏波アンテナ:

    電波が一方向に振動しながら送受信するタイプで、タグの向きと一致しないと読取精度が落ちる指向性の強いアンテナです。
    円偏波に比べて読み取り距離は長いですが、範囲は狭い特長があります。

2.アンテナの最適な設置方法

アンテナ(固定型リーダー)の良く使われる設置位置と注意点について説明します。

① 設置位置

高い場所に設置

アンテナを地面から2メートル以上の位置に設置することで、物による電波の遮蔽を防ぎ、安定した通信を行うことができます。
これにより床面の障害物による電波干渉を回避できます。

出入口に設置

施設の出入り口付近にアンテナを設置することにより、通過する物品や人をリアルタイムで監視し、正確な移動管理を行うことができます。
ゲート式リーダーを使用すれば、通過物の捕捉率を高めることができます。

複数のアンテナを設置

アンテナは特定の方向の電波を拾うことはできますが、逆に電波を拾いにくい方向(死角)が存在します。
広い範囲で漏れなくRFIDタグを検出したい場合、アンテナを複数準備して死角を無くすように設置します。

特定の場所に配置

特定のエリアや装置などにアンテナを集中して配置することにより、重要な地点で精度の高い電波の受信が可能となります。
例えば生産ラインにおいて製品が特定地点を通過する場合、この位置を高精度で検出することができます。

② 注意点

アンテナの向き調整

アンテナの向きを調整し、RFIDタグとアンテナを平行に配置することで良好な通信が可能となります。
両者の角度がずれると読み取り漏れが発生する場合があります。
特に直線偏波アンテナでは、この平行配置が重要です。

干渉の回避

複数のアンテナを設置した場合、同じチャネルを使用すると互いに干渉して正常な通信ができなくなります。
これを回避するために、近接するアンテナはチャネル(周波数)を調整する必要があります。
また、金属や水などの電波を吸収する物質の近くにアンテナを設置することは避けるべきです。

電波強度の最適化

アンテナの出力は強ければ良いというわけではありません。
出力が強すぎると、読み取って欲しくないRFIDタグまで読んでしまう可能性があります。
用途と環境に合わせて適切な出力に調整する必要があります。

エリア分割

広い場所では、複数のセクションに分割してアンテナを設置することで読取精度を向上させることができます。

〈 データベースおよびソフトウェアシステム 〉

1.データベースのポイント

RFIDシステムにおけるデータベースの重要性や構築ポイントについて説明します。

データベースのポイント

① 役割と目的

RFIDタグから読み取ったデータをRFIDシステムで管理することが重要です。
システムで物品の位置情報を把握したり在庫管理に活用したり、作業の自動化と効率化が可能になる為です。

② データの種類

RFIDシステムに格納されるデータには、RFIDタグと紐付けられた製品情報(製品名、製品番号、製造日など)、製品の履歴情報(移動履歴やメンテナンス履歴)などがあります。
RFIDタグのメモリには書換えできる領域とできない領域があり、どの領域にどの情報を割り当てて紐づけさせるか検討することが重要です。

③ リアルタイムデータ更新

RFIDタグを取り付けた製品を移動させてRFIDリーダーライタの前を通過するとリアルタイムにデータベース化するRFIDシステムを構築可能です。このリアルタイム性により、現場の状況を瞬時に把握することが可能になります。

④ タグ保存容量

タグの種類によって保存容量は異なり、パッシブタグでは数バイトから数キロバイト、アクティブタグではさらに大きな容量のデータを格納できます。

⑤ インデックス機能

インデックス機能によりタグIDや製品名等から高速に情報へのアクセスが可能です。
適切なインデックス設計により、大量データでも検索性能を維持できます。

⑥ データの整合性

RFIDリーダーライタから読み込んだタグ情報とデータベース内の情報をリアルタイムに同期するRFIDシステムもあります。
トランザクション処理を導入することで、複数の同期操作による不整合を防止できます。

⑦ データセキュリティ

特定ユーザーのみが特定データにアクセスできるように制限することでデータの保護を行えます。
さらに、RFIDリーダーライタとタグ間におけるデータ通信を暗号化することでアクセスや情報漏洩を防止しています。

⑧ 履歴管理

誰がいつ、どのデータにアクセスしたかの履歴を保存しておくことにより、トラブル発生時の原因究明ができます。

⑨ クエリとレポート機能

データベースから在庫状況や資産状況のレポートを自動的に出力することが可能です。
ビジネスインテリジェンスツールと連携することで、高度な可視化や分析も実現できます。

2.RFIDシステムの統合と運用管理

RFIDシステムと既存システムとのデータ統合およびシステム運用管理の重要性について説明します。

① 統合

既存システムとの連携
RFIDシステム導入時は、既存のシステムとの連携も検討する場合が多いです。
RFIDタグから得たデータを既存の生産管理・在庫管理システムとの連携を行うことで、生産ラインの最適化や在庫管理の効率化につなげることができます。
API活用
APIを利用することでRFIDシステムと他システムとのデータ連携が可能です。
異なるシステム間でデータの連携や機能の統合ができ、業務プロセスを効率化させることができます。
インフラ整備
RFIDシステムでは、データベースの容量確保、ネットワーク環境整備、アンテナの配置などのインフラの整備が、安定稼働するためには欠かせません。
広範囲におけるデータの読み取りや大規模なデータ処理が求められる場合のインフラ設計は重要ですが、まずは特定エリアだけRFIDシステムを導入しスモールスタートで始めてから、拡張・水平展開するユーザーも多いです。

② 運用

タグの選定
RFIDシステムの導入時には、タグの選定が重要です。
用途や使用環境をふまえて、サイズ・メモリ・通信性能・耐環境性能(耐熱性、耐水性、耐薬品性など)を考慮してタグを選定します。
定期的なメンテナンス
通信環境のチェック、リーダーライタやアンテナの動作確認、ソフトウェアの最新版へのアップデートなどの定期的なメンテナンスは、RFIDシステムとしてのパフォーマンス維持に必須です。
使用環境が変化する場合には、アンテナの設置位置の再確認やタグの再選定をする必要があります。
データ分析と改善
RFIDシステムからの収集データを分析することで業務改善に結びつけることが可能です。
例えば、以下の具体例があります。
・商品の入出荷を監視し、在庫管理の最適化や物流コストの削減につなげる。
・データ分析により顧客の購買動向を把握し生産計画の最適化につなげる。
・機械学習やAI活用による予測分析を導入し、需要予測の精度向上や異常検知の自動化を実現できる。
セキュリティ管理
情報漏洩や不正アクセスの防止のためにRFIDシステムのセキュリティに配慮する必要があります。
リーダーライタとRFIDタグ間における通信の暗号化やタグのロック機能や無効化機能を利用することでシステムとしての安全性を確保することができます。
特に個人情報や重要機密を取り扱う場合には高度なセキュリティ対策が求められますが、多要素認証の導入や定期的なセキュリティ監査、ペネトレーションテストの実施によってセキュリティレベルを維持向上させることができます。