〈 RFID通信の動作 〉
1.タグとリーダーライタ通信プロセス
RFIDはリーダーライタより電波を送信することによりタグとの間で通信を行います。
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- 1.リーダーライタから信号送信
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リーダーライタから特定の周波数の電波を周辺のタグに送信
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- 2.タグの検出(受信)
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タグはリーダーライタからの電波を受信すると、タグ内のICチップが起動
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- 3.タグから信号送信
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タグ内のアンテナを介してチップ内の情報をリーダーライタに送信
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- 4.リーダーライタで信号受信
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タグから発信された情報をリーダライタで受信し、リーダライタの制御コントローラを介して、PCなどでデータ処理を行う
2.通信の安全性と効率化
RFIDシステムにおいて通信の安全性と効率化は課題となりますが、適切な技術を選択、実装によって安全で効率的なデータ交換が可能になります。
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① 通信プロトコルの選択
RFIDシステムでは、リーダーライタとタグ間の通信における混信や衝突を防ぐために、特定のプロトコルが採用されています。
これは「アンチコリジョン機能」と呼ばれ、複数のタグが同時に応答する際に発生する信号の衝突(コリジョン)を防ぐために実装されています。
この機能により複数のタグを同時に読み取ることが可能になります。 -
② 認証とセキュリティ
セキュリティが重視される通信では、リーダーライタとタグ間で認証処理が行われ、なりすましやデータの改ざんを防ぎます。
また暗号化技術を用いることで、さらに安全な通信が可能になります。
〈 通信プロトコル 〉
1.ISO/IEC 14443
ISO/IEC 14443は近接型非接触式ICカードに関する国際規格であり、HF帯のRFID規格の一種です。
① 目的と用途
ISO/IEC 14443では非接触型ICカードの信号インターフェース、物理的特性、周波数、通信プロトコルなどを規定しています。
身分証明書、決済システム、公共交通機関のチケットなど様々な場所で使われています。
② 通信プロトコル
本規格では13.56MHzの短波帯(HF帯)が使用され、タイプA、タイプBの2種類があり異なる通信方式を使っています。
タイプAは振幅偏移変調(ASK)とミラー符号を使用し、タイプBではASKとNRZ符号を使用しています。
③ 電力供給
ISO/IEC 14443に準拠したカードでは、パッシブ型のRFIDタグが使われるため、バッテリーは内蔵されておらず、電力供給はリーダーライタから行われます。
④ セキュリティ
ISO/IEC 14443は、近距離無線通信におけるセキュリティ強化のために、リーダーとカード間の相互認証が導入されており、不正アクセスを防止します。
また、データの機密性を確保する為に、AESなどの暗号化技術が利用され、情報の漏洩や偽造を防ぎます。
⑤ 応用例
ISO/IEC 14443に準拠したカードは、以下のような応用例があります。
生体認証パスポート |
多くの国の電子パスポートでは、この規格に準拠しています。 |
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クレジットカード |
MastercardのPayPass、VISAのpayWaveなどの非接触型カードが該当します。 |
2.ISO/IEC 15693
ISO/IEC 15693は近傍型非接触式ICカードに関する国際規格であり、HF帯のRFID規格の一種です。
ISO/IEC 14443よりも通信距離が長い規格として、ISO/IEC 15693が挙げられます。
① 目的と用途
ISO/IEC 15693は、非接触型ICカードの物理特性、通信プロトコル、空間インターフェースなどを規定しており、アクセス制御、資産管理、在庫、物流管理など比較的長い通信距離を必要とする場合に使われています。
② 通信プロトコル
本規格では13.56MHzの短波帯(HF帯)が使用されており、変調方式は振幅偏移変調(ASK)や位相偏移変調(PSK)が使用されています。
③ 電力供給
ISO/IEC 15693に準拠するカードでは、パッシブ型のRFIDタグが使われるため、バッテリーは内蔵されておらず、電力供給はリーダーライタから行われます。
④ セキュリティ
ISO/IEC 15693ではセキュリティプロトコルは規定されていませんが、製品実装時に暗号化や認証プロセスを組み込むことで、セキュリティを強化することが可能です。
⑤ 応用例
ISO/IEC 15693のICカードでは、以下のような応用例があります。
資産管理 |
企業内における資産の追跡や管理に利用されています。 |
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蔵書管理 |
図書館での図書の貸出・返却業務の効率化や在庫管理に使われています。 |
物流管理 |
製品の追跡や在庫のリアルタイム管理に使用されています。 |
3.ISO/IEC18000-63
ISO/IEC 18000-63はUHF帯のRFIDに関する国際規格であり、RFID規格の一種です。
前述のISO/IEC 14443やISO/IEC 15693はHF帯に関する規格ですが、ISO/IEC 18000-63はUHF帯の規格としてEPCglobalという組織により確立されました。
① 目的と用途
ISO/IEC18000-63は、UHF帯RFIDタグとリーダーライタ間の物理的特性、通信プロトコル、空間インターフェースなどを規定しており、アクセス制御、資産管理、在庫、物流管理など比較的長い通信距離を必要とする場合に使われています。
UHF帯RFIDタグの利点を活かしてリアルタイムに製品追跡や管理を行うことで、サプライチェーン全体の効率化を推進しています。
② 通信プロトコル
本規格では860~920MHzの超短波帯(UHF)が使用されており、デジタル変調であるBPSK、QPSK、QAMなどが使用されています。
③ 電力供給
ISO/IEC18000-63に準拠するUHF帯RFIDタグでは、パッシブ型のRFIDタグとバッテリーを内蔵するアクティブ型の2種類が使用されています。
④ セキュリティ
ISO/IEC 18000-63ではタグに情報を書き込んだ後にロックコマンドやパスワードロックなどのセキュリティプロトコルが規定されています。
また、書き込み対象のメモリエリアをユーザーごとにアクセス可能なエリアを区別する権限を付与することも可能です。
⑤ 応用例
ISO/IEC 18000-63に準拠したUHF帯RFIDシステムは、小売業、医療、製造業、物流などさまざまな業務で利用され以下のような応用例があります。
アパレルブランド「ZARA」 |
店舗在庫を正確に把握することが可能となり、売り損じを抑え、在庫の最適化を図ることができるようになりました。 |
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ウォルマート |
製品の入出庫をリアルタイムで管理することで、物流の効率化とコスト削減を実現できました。 |
医療機関 |
RFIDタグを組み込んだリストバンドを患者が装着することで、投薬ミス防止につなげることができました。 |
4.通信プロトコルの役割と重要性
RFIDシステムにおいて通信プロトコルの役割は非常に重要です。
通信プロトコルはデータの正確かつ迅速な交換を実現し、在庫管理や物流の効率化を支援すると共に、システムの運用コスト削減や処理速度の向上にも貢献します。
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① データ交換の標準化
標準化されたプロトコルにより、RFIDタグとリーダーが異なる環境においても通信およびデータの正確な伝送が保証されます。
物流、在庫管理、製造業などさまざまな業界で統一されたプロトコルを活用することでシステム間のデータ交換が容易になります。 -
② 通信の効率化
通信の効率化は、システムのパフォーマンス向上に重要な要素です。
プロトコルはタグとリーダー間のデータ転送を最適化するに設計されており、通信を効率化と処理速度の向上に寄与します。
例えば、複数のタグが同時に読み取られる場合、衝突回避技術が使用され、同時通信を効率的に管理できます。
〈 RFID通信の周波数帯 〉
1.各周波数帯の特性と使用例
RFIDにおける各周波数帯の特性などについて説明します。
低周波(LF)|高周波(HF)|超高周波(UHF)|微波(MIcrowave)
① 低周波(LF)
周波数 |
30~300kHz (RFIDでは主に125kHzや134.2kHzが使用されている) |
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通信距離 |
最大数十センチ程度 |
通信速度 |
低速 |
特性 |
・金属や水分の影響を受けにくい ・高湿度や金属環境下でも安定した通信が可能 |
使用例 |
・車両セキュリティ ・社員証 ・セキュリティゲート ・過酷な環境下(高温、高湿)での設備管理 など |
② 高周波(HF)
周波数 |
13.56MHz |
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通信距離 |
数十センチ~数十センチメートル |
通信速度 |
比較的高速(近距離での高速通信が可能) |
規格 |
・ISO/IEC 14443(近接型カード) ・ISO/IEC 15693(近傍型カード) |
形状 |
カード型、ラベル型、キーリング型 |
特性 |
・水分の影響を受けにくく、電波の反射や干渉が少ない ・周辺金属の影響を受けやすい |
使用例 |
・非接触ICカード(交通系ICカードや電子マネー) ・図書館の蔵書管理 ・医療用データの管理 など |
③ 超高周波(UHF)
周波数 |
主に860MHzから960MHz(地域によって異なる) ・日本国内:920MHzから928MHz ・北米:902MHzから928MHz ・欧州:865MHz~868MHz |
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通信距離 |
数メートル~数十メートル (広範囲での識別が可能) |
通信速度 |
中速から高速 |
規格 |
ISO/IEC 18000-63(国際標準規格として広く採用) |
形状 |
カード型、ラベル型、ハードタグ、金属対応タグなど |
特性 |
水分の影響を受けやすい (周辺環境を配慮するなど十分な対策が必要) |
使用例 |
・物流 ・在庫管理 ・小売商品の追跡 ・入退出管理、車両の通行管理など ・広範囲で複数のタグを同時に読み取る場合に利用 |
④ 微波(Microwave)
周波数 |
主に2.45GHzと5.8GHz |
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通信距離 |
2メートル~数十メートル |
通信速度 |
直進性で高速 (無線LANやBluetooth機器などの混信や干渉の懸念あり) |
特性 |
・データ転送速度が高速であること ・環境の影響(金属や水分の影響)を強く受けやすい (これらの要素が多い環境下では、性能が劣化する可能性あり) |
使用例 |
・ETC(高速道路の料金所) ・工場内の自動搬送機 ・車両管理システム ※無線LANやBluetoothも同じ周波数帯であるが、RFIDとは別の用途として区別 |
2.周波数選定の影響
各周波数帯のRFIDシステムにおける周波数選定の影響について説明します。
低周波(LF)|高周波(HF)|超高周波(UHF)|微波(MIcrowave)
① 低周波(LF)
対象物への影響(干渉) |
金属や水分の影響を受けにくい (高湿度や金属の多い環境下でも安定した通信が可能) |
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システムの設計とコスト |
アンテナ形状が比較的大きい為、小型化が困難・割高 ※近年では汎用性が低くなってきている |
タグの用途 |
・ペットや家畜の個体識別用 ・自動車の鍵に埋め込み鍵の正当性を認証する車両セキュリティ ・近接型の社員証やセキュリティゲート ・過酷な環境下における設備管理 など |
法的規制と地域ごとの規制 |
・30~300kHz(周波数や出力制限は、国や地域によって異なる) ・多くの国では特別な免許なしで使用できる場合が多い (使用される国の電波法の確認が必要) |
電力消費 |
バッテリー不要で長期間使用が可能でかつ低消費電力 (一般的にパッシブ型タグが使用され、リーダーライタから供給される電磁波により誘起されて起動するため) |
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まとめ
LF帯は、環境の影響(金属や水分)を受けにくく安定した通信を行うことができます。
車両セキュリティや家畜の個体識別などの用途で使用されています。
パッシブタグを使用するため、長期間にわたり低消費電力でシステムを稼働することが可能です。
ただし、通信距離は数十センチ程度でデータ転送速度も遅いという問題点があります。
② 高周波(HF)
対象物への影響(干渉) |
水分の影響を受けにくい(電波の反射や干渉もあまりない) |
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システムの設計とコスト |
・比較的安価で大量生産が可能 ・リーダーライタは安価なものもあり比較的コストを抑えることが可能 ・使用周波数帯は、世界的に標準化されているため国際的な運用が可能 |
タグの用途 |
・交通系カード ・電子マネーなどの非接触型ICカード ・書籍の貸し出し管理 ・患者や医療機器の識別管理 ・スマートフォン間のデータ交換/モバイル決済(NFCなど)など |
法的規制と地域ごとの規制 |
ほとんどの国でライセンスを必要とせずに使用可能 (ただし、各国の電波法や規制に従う必要あり) |
電力消費 |
・長期間、安定動作させることが可能 (主にパッシブ型のタグが使用されており、リーダーライタからの電磁波エネルギーで誘起されて起動するため) |
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まとめ
HF帯は、近距離でのデータ通信に適しており、コストパフォーマンスが高い特徴があります。
金属や水分の影響を受けやすいですが、適切な設計でこれらの影響を最小限に抑えることが可能です。
国際的に統一された周波数を利用できるため、広範囲での用途が期待できます。
通信距離は約10cm程度で、LF帯と比べるとデータ転送が可能です。
③ 超高周波(UHF)
対象物への影響(干渉) |
・金属や水分の影響を受けやすい ・金属表面への直接タグの取り付け使用や水分を含む物質の環境下では通信性能が低下する可能性があり (近年では金属に対応したタグも多く開発されている) |
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システムの設計とコスト |
・比較的安価で大量生産が可能 ・リーダーライタは比較的高価になる傾向がある ・周辺の金属の影響を受けやすい為、システム設計時に考慮が必要 <システム設計時の考慮点> ・タグの貼り付け位置 ・リーダライタ、アンテナの配置場所 |
タグの用途 |
近年では大小様々なタグが開発されており、管理できる対象が拡大 例) ・アパレル商品の在庫管理や棚卸管理 ・商品の追跡や真贋管理 ・校正機器の資産管理など |
法的規制と地域ごとの規制 |
国によって使用可能な周波数帯が異なる ・日本国内:920~928MHz ・北米:902~928MHz ・欧州:865~868MHz |
電力消費 |
・比較的低コストで長期間安定した通信を行うことが可能 (主にパッシブ型のタグが使用されており、リーダーライタからの電磁波エネルギーによって誘起され動作するため) ・アクティブ型やセミアクティブ型のタグ使用時は、長い通信距離を持つことが可能 (ただしコストが高くなる傾向あり) |
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まとめ
UHF帯は、比較的長い距離~数十メートルと高速なデータ通信が可能なため、物流や小売業で広く利用されています。
ただし水分や金属などの環境の影響を受けやすいため、設計上の配慮が必要です。
また、国によって使用される周波数が異なるため、国ごとに決められた周波数と規制に従った運用が求められます。
④ 微波(Microwave)
対象物への影響(干渉) |
・金属や水分の影響を受けやすい ・2.45GHzや5.8GHzの周波数を使用 ・Bluetooth機器や無線LANなどとの混信や電波干渉の懸念がある ・マイクロ波帯を利用する際は対策の必要がある |
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システムの設計とコスト |
・高速なデータ通信が可能(ただしシステム設計とコストに注意が必要) ・高周波数帯の通信を行うためには、高品質なアンテナや部品が必要となりコスト高になる傾向あり |
タグの用途 |
・高速道路のETCシステム ・駐車場へのアクセス管理 ・高価な資産のリアルタイム追跡など |
法的規制と地域ごとの規制 |
・地域によって使用可能な周波数や出力制限が異なる ・使用条件や出力制限は各国の規制に従う必要がある ・多くの国では免許が必要になる場合がある |
電力消費 |
・パッシブ型、セミパッシブ型、アクティブ型のタグがある ・アクティブ型は通信距離が数十メートルと長い ・コストが高く、また定期的なメンテナンスやバッテリー交換の必要がある ・UHF帯やHF帯に比べると近年ではあまり使用されていないのが実情 |
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まとめ
マイクロ波帯は、高速データ通信や長距離通信が可能なため、特定の用途で使用されています。
しかし、水分や金属などの環境の影響を受けやすいためシステム設計の際の考慮が必要です。
さらにコストが高く各国の法規制に従う必要があるなどの要因をあわせて考慮した運用が求められます。
通信距離は2メートル前後~数十メートルとなりアクティブ型の場合はバッテリー寿命の制限があります。
〈 RFID通信におけるエラー処理 〉
RFID通信におけるエラー処理について説明します。
1.データ伝送のエラーとその原因
① 信号干渉
RFIDシステムは、他の無線通信システムと同じ通信周波数を使用することがあります。
例えば2.45GHz帯のRFIDの場合、BluetoothやWi-Fiシステムと同じ周波数となるため、両者で信号の干渉が起こり通信エラーの原因になることがあります。
② 範囲外通信
RFIDタグがリーダーライタの通信範囲外にある場合、データ通信ができずにエラーとなる場合があります。
LF帯やHF帯では数十センチ、UHF帯では~数十メートルが一般的な通信範囲となり、この範囲を超えた場合は読み取りができず通信エラーとなります。
③ 電波の反射や吸収
金属面に直接RFIDタグを取り付けたり、水分を含む物質を扱ったりするとRFIDの電波を吸収または反射する恐れがあります。
そのため、周囲の環境要因により通信性能が低下したり、通信そのものができなくなったりすることがあります。
このため、システム設計を行う際には、これらの環境要因の影響を十分に考慮する必要があります。
④ 多重アクセス干渉(衝突)
複数のRFIDタグがリーダーライタと同時に通信を行うと信号が衝突し、データの読み取りエラーが発生することがあります。
これを防ぐためにアンチコリジョン機能を搭載したリーダーライタが開発されています。
これにより複数のタグが同時にリーダーライタにアクセスしても一括で読み取ることができます。
⑤ 物理的障害物
RFIDタグとリーダーライタの間に金属や水分を含んだ障害物が存在すると通信エラーを起こすことがあります。
ただし、金属や水分以外の物質であれば、ある程度電波の伝搬が可能となることがあるため、通信エラーを回避できる場合もあります。
⑥ タグの電池切れ(アクティブタグの場合)
アクティブ型のRFIDタグの場合、バッテリーを内蔵しているため、バッテリーが寿命を迎えると通信ができなくなります。
このため定期的なメンテナンスやバッテリーの交換が必要になります。使用頻度によりますがバッテリーは数か月から数年で交換が必要です。
⑦ タグの故障や損傷
RFIDタグ自体の不良や物理的損傷により、データの読み取りができなくなることがあります。
例えば、アンテナ部分の断線や、ICチップの故障などが原因となります。
⑧ 環境要因
RFIDシステムの周辺環境によりデータ通信に影響を与える可能性があります。
低温や高温の温度条件、高湿度や結露、化学薬品、静電気、高電圧などといった環境にさらされると、タグのデータ読込性能に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 電波の帯域制限
RFIDシステムは、各国の電波法やその他の規制で使用できる周波数や電波出力が制限されています。
これらの制限に従わないと電波干渉や法的問題が発生し、データ通信エラーを引き起こす可能性があります。
⑩ タグのメモリ容量制限
RFIDタグのメモリ容量には制限があります。
制限を超えるデータの書き込みを行おうとするとデータ伝送エラーが発生します。
一般的なタグのメモリ容量は数バイトから数キロバイトです。
⑪ ソフトウェアのバグや不具合
RFIDシステムを制御するソフトウェアにバグがあるとデータ通信エラーが発生する可能性があります。
例えば、データの暗号化設定や通信プロトコルの設定にバグがあると正常なデータ通信を行うことができません。
2.エラー検出・修正のメカニズム
RFIDシステムにおける通信エラーの検出と修正のメカニズムについて説明します。
① チェックサム (Checksum)とCRC(巡回冗長検査)
RFIDシステムにおけるデータ通信では、チェックサムやCRCを用いてデータの整合性のチェックを行います。
送信データによって生成されたチェックデータを受信し、送信されたチェックデータと比較することにより、データの破損や改ざんを検出できます。
② 冗長データ(再送信)
データ通信においてエラーが検出された場合、再送信を行うことで通信の信頼性を高めています。
③ タグの再起動とリセット機能
タグが応答しない場合、リーダーライタはタグの再起動やリセットコマンドを送信することで、通信の再通信を試みることができます。
④ フレーム同期
データ通信における一連のデータの塊であるデータフレームの開始と終了を示すフレーム同期を取ることにより、データの節目を明確にして、データ通信のエラーを防いでいます。
これにより、受信側は正確にデータの開始と終了を識別しています。
⑤ タイムアウト
一定時間にタグからの応答がない場合、タイムアウトを行い再試行することで通信の信頼性を向上させています。
タイムアウト時間はシステムの要件に応じて調整することが可能です。
⑥ ECC(エラーチェックと訂正)
ECCはデータ転送中のエラーを検出して訂正する技術です。
RFIDでは、リーダーライタからタグへデータを転送する際に、エラー訂正コードを付加することで、受信側でこのデータを処理し、エラーが発生したかどうかを判断し、可能な限りエラー訂正を行います。
3.信号干渉とその対策
① 信号干渉の原因
RFIDシステムが使用する通信周波数は、2.45GHzを使用するものがあります。
この周波数は、Wi-Fi、Bluetooth、電子レンジなど多くの機器でも使用しているため、これらの機器からの電波により干渉を引き起こす可能性があります。
② 干渉の影響
UHF帯は比較的干渉が少ないことが特徴ですが、スマートメーターなどの無線通信システムが同帯域で使用されているため干渉のリスクがあり、リーダーライタとタグ間の通信距離が短くなる恐れや、読み取りに支障をきたす可能性があります。
③ 信号干渉への対策
対応策として考えられるのは以下です。
- ・アンテナ間の距離を適切に保つことで通信の安定性を確保する。
- ・干渉が少ない周波数を選択することで、他の機器との干渉を防ぐ。
- ・トラブルが発生する時間を特定し、干渉源に対する対策を決定する。
- ・通信周波数のチャンネルを変更する。
- ・RFIDシステムと干渉源との間にシールドを設置し、不要な電波の影響を抑止する。
④ 干渉のモニタリングと分析
定期的に電波環境のモニタリングを行い、干渉源を特定すると共に、その影響度を分析することで、適切な対策を決定することができます。
また、スペクトラムアナライザなどの測定機器を使用し、周波数帯域の使用状況を可視化することも有効です。
⑤ 電波法と規制の遵守
RFIDシステムは、各国の電波法による規制に準拠する必要があります。
日本国内では、周波数帯や出力電力に応じて、特定小電力タイプや高出力タイプとして分類されており、必要に応じて総務省への申請が必要となります。