コストやセキュリティ、技術面の問題を紹介

RFID導入のデメリット

RFIDは非常に便利な技術ですが、導入にあたってはいくつかのデメリットも存在します。
初期費用が高額になりがちなことに加え、セキュリティやプライバシーの問題、さらには技術的な課題も解決しなければ、期待した効果を得ることは難しいでしょう。
こうした点を踏まえ、RFID導入の際には事前に十分な準備と検討が必要です。
導入のメリットを最大限に引き出すためにも、注意すべきポイントをしっかりと理解しておきましょう。

〈 はじめに 〉

RFIDは、業務効率の向上や作業の自動化に貢献する通信技術として注目されています。
しかしその一方で、いくつかのデメリットも存在します。たとえば、初期導入コストの高さに加え、セキュリティや技術面での課題、運用の複雑さなども考慮すべきポイントです。こうした課題に適切に対応することで、RFID導入の効果を最大限に引き出すことができます。
そのため、RFIDの導入を検討する際には、あらかじめデメリットやその対策について理解を深めておくことが非常に重要です。
本記事では、RFID導入における主な課題と、その対処法について詳しく解説します。

〈 初期投資と導入コスト 〉

RFIDシステムを導入する際には、一定の初期投資が必要となります。
特に重要なのが、ハードウェアの購入費用とソフトウェアの開発費用です。
また、導入後のメンテナンスにかかるコストについても、あらかじめ把握しておくことが重要です。
予算内で導入が可能かどうかを判断するためにも、各費用項目をしっかりと確認しておきましょう。
ここでは、RFID導入時に必要となるハードウェアの購入費用とソフトウェア開発費用について、詳しくご紹介します。

初期投資と導入コスト

1.ハードウェアの購入費用

  • RFIDシステムを導入するには、「RFIDリーダライタ」「RFIDタグ」「アンテナ」などの専用ハードウェアに加え、PCやタブレット、プリンターといった周辺機器も必要となります。

    近年では、部材や製造工程の効率化により、数量規模にもよりますが、1枚あたり数十円以下のRFIDタグも登場しています。
    一方で、RFIDリーダライタはハンディターミナルや据え置き型など用途にもよりますが、1台あたり約60万円以下、アンテナは1台あたり約10万円以下です。さらに、システムを稼働させるためのインフラ構築費用や周辺機器の導入費も必要です。
    これらをすべて含めると、初期投資は数百万円から場合によっては数千万円にのぼる可能性があります。

    また、工場設備として導入する場合は、予防保全の観点から定期的なメンテナンスが欠かせません。したがって、導入後も継続的なメンテナンス費用が発生します。

    ハードウェアの購入費用

    〈 ハードウェアの購入費用 〉

    RFIDリーダライタ 〜60万円/台
    RFIDタグ 数十円/枚
    (数量による)
    アンテナ 〜10万円/台

    ※周辺機器およびインフラ構築費用は別途必要

2.ソフトウェア開発費用

RFIDシステムの運用には、ハードウェアだけでなく、目的に応じた各種ソフトウェアも必要です。代表的なソフトウェアには、以下のようなものがあります。

資産管理アプリ 資産情報を一元管理し、台帳管理の効率化を実現
入出荷・在庫管理アプリ 物流の流れを可視化し、在庫状況をリアルタイムで把握
設備部品管理アプリ 設備故障時の予備部品の在庫を最適化し、過剰在庫を防止
  • これらのソフトウェアは、一般的にパッケージライセンスとして販売されており、ライセンス費用に加えて、技術サポート費用や保守費用が別途発生します。
    そのため、導入を検討する際には、ソフトウェア全体にかかる費用についてベンダーから詳細な見積もりを取ることが重要です。
    さらに、自社の業務内容に合わせてソフトウェアをカスタマイズする場合は、カスタマイズ費用も必要になるため、事前に確認しておきましょう。

    ソフトウェア開発費用

〈 セキュリティとプライバシーの問題 〉

RFID技術は業務効率を大きく向上させる一方で、セキュリティやプライバシーに関するリスクも伴います。
適切な対策を講じなければ、情報の漏えいや不正利用といった問題が発生する可能性があります。
そのため、RFIDを導入する際には、プライバシー保護やセキュリティ強化の取り組みが不可欠です。
ここでは、RFIDデータの盗聴や不正アクセスといったセキュリティ上のリスク、そしてプライバシー侵害の可能性について詳しく解説します。

セキュリティとプライバシーの問題

1.データの盗聴や不正アクセスのリスク

  • RFIDは、RFIDリーダライタとRFIDタグの間で無線通信を行い、情報の読み取りや書き換えを行う仕組みです。そのため、通信内容を第三者に傍受され、機密情報を盗まれるといった「中間者攻撃(MITM)」などのサイバーリスクに注意が必要です。
    このようなリスクに備えるためには、データ盗難や不正アクセスに対するリスクアセスメントの実施が重要です。

    データの盗聴や不正アクセスのリスク

具体的なセキュリティ対策としては、以下のような方法が挙げられます。

  • ・RFIDタグに暗号化認証機能を持たせる
  • ・特定のRFIDリーダライタでしか読み取れないよう制限を設ける
  • ・システム導入時に、出入口にアンテナを設置し、不正なタグの持ち出しを検知する仕組みを導入する

これらの対策を講じることで、情報漏えいや物品の盗難リスクを大幅に低減することが可能です。

2.プライバシーの侵害

  • RFIDは、遠隔からタグ情報を読み取ることができるため、商品管理や位置情報のトラッキングに非常に役立つ技術です。
    しかし、その利便性が逆にプライバシー侵害のリスクを引き起こす可能性もあります。

    例えば、RFIDタグに取引先情報や商品、価格などの詳細な情報を格納してしまうと、消費者の買い物履歴や行動が外部に把握され、不正利用される恐れがあります。さらに、これらの情報が第三者に盗まれた場合、個人情報の悪用といったリスクも懸念されます。

    こうしたプライバシー問題に対応するためには、RFIDタグに暗号化技術や認証機能を組み込むことが重要です。また、商品の購入時にタグを取り外す仕組みを導入するなど、消費者のプライバシーを守るための対策も必要です。

    プライバシーの侵害

〈 技術的な課題 〉

RFIDシステムには技術的な課題も残っており、特に環境要因によって通信障害が発生することがあります。
適切な対策を行わないと、正常な通信が妨げられる可能性があるため注意が必要です。
そこで、システム導入の際はこれらの技術的課題を正しく理解し、必要な対策を講じることが重要です。
ここでは、環境要因による通信障害やシステムの信号干渉について、詳しく解説します。

技術的な課題

1.環境要因による通信障害

  • RFIDは環境の影響で通信障害が起こることがあります。
    例えば、金属にRFIDタグを貼り付けると、電波が反射して通信が妨げられるため、金属対応のRFIDタグを使用する必要があります。

    また、RFIDの電波は液体に吸収されやすいため、ペットボトルなど液体容器にタグを貼る場合は、ボトルの上部など液体から離れた場所などに貼ることが効果的です。

    さらに、高温や低温の環境下で使用する場合は、耐熱性や耐低温性に優れた専用タグを使用する必要があります。加えて、RFIDタグは湿度にも弱いため、使用環境の湿度管理を行うこともおすすめします。

    環境要因による通信障害

2.システムの他の通信との干渉

  • RFIDシステムは電波を使った通信技術のため、他の無線機器と周波数が重なると信号干渉が発生することがあります。特に、BluetoothやWi-Fiなどの無線通信を併用する場合は、干渉リスクに十分注意が必要です。

    製造現場でRFIDを活用した製造DXを進める際は、各種無線通信技術に詳しい専門ベンダーに相談し、信号干渉が起こらないようにシステム設計・構築を依頼することをおすすめします。

    システムの他の通信との干渉

〈 運用の複雑さと管理負担 〉

RFIDシステムを安定して運用するためには、定期的なメンテナンスやシステムのアップグレードが欠かせません。運用体制をしっかりと整備しておくことが重要です。
ここでは、RFIDタグの管理・メンテナンスとシステムの更新・アップグレードについて詳しく解説します。

運用の複雑さと管理負担

1.RFIDタグの管理とメンテナンス

  • RFIDタグは基本的にメンテナンス不要で、半永久的に使用できるものがほとんどです。ただし、通信距離が10m以上あるアクティブタグはバッテリーを内蔵しているため、定期的な電池交換が必要になります。
    また、ラベルタイプのRFIDタグは水濡れや汚れに弱いため、定期的にきれいに拭くなどのお手入れが重要です。

    万が一、読み取り不良が発生した場合は、そのタグを取り外すなどの対応を行いましょう。大量のタグを管理する際はメンテナンスに手間がかかることもあるため、負担を軽減する方法についてベンダーに相談するのがおすすめです。

    RFIDタグの管理とメンテナンス

2.システムの更新とアップグレード

  • RFIDシステムは、新機能の追加やセキュリティ強化のために定期的なアップデートが必要です。アップデート作業中は、一時的にサービスが停止する「ダウンタイム」が発生することがあります。
    そのため、システムアップデートの際にどの程度のダウンタイムが見込まれるか、また新機能追加時に操作トレーニングを受けられるかを事前にベンダーに確認しておくことをおすすめします。

    さらに、アップデートによりハードウェアとソフトウェア間で互換性の問題が生じると、システムが正常に動作しなくなる可能性があります。こうした互換性の確認も必ず行いましょう。

    システムの更新とアップグレード

〈 標準化と互換性の問題 〉

RFIDシステムを導入する際には、互換性の問題が発生することがあります。特に、社内の既存システムと連携させる場合は、互換性のある製品を選ぶなど事前の確認と慎重な検討が必要です。
ここでは、他システムとの統合する際の難しさや、異なるタグやリーダライタ間での相互運用性の課題について詳しく解説します。

1.他システムとの統合の難しさ

  • RFIDシステムは、在庫管理や受発注システムなど既存の社内システムと連携することで、業務効率の向上が期待できます。しかし、互換性の問題があるとスムーズな連携や統合が難しくなります。
    例えば、データフォーマットの不一致により、システム間でデータを一元管理できないケースもあります。

    そのため、RFIDシステムを導入する際は、自社の既存システムとの相性をよく確認し、互換性のある製品を選ぶことが重要です。また、導入後のトラブルを防ぐために、サポート体制が充実しているかどうかも事前に確認しておきましょう。

    他システムとの統合の難しさ

2.異なるタグ・リーダー間での相互運用性の課題

  • RFIDシステムには統一されたインターフェースがないため、製品によっては互換性がない場合があります。そのため、「RFIDリーダライタ」「RFIDタグ」「アンテナ」「周辺機器」などのハードウェアやソフトウェアは、基本的に同一メーカーの製品を揃えて使用することを推奨します。
    ベンダーとよく相談し、自社の業務に適した規格や周波数、性能を持つRFIDシステムを慎重に選定しましょう。

    RFID

〈 まとめ 〉

RFIDシステムの導入には、初期投資や運用コストのほか、セキュリティや技術面での課題など、いくつかのデメリットが伴います。
特に、通信障害や信号干渉により読み取り精度が影響を受けることがあるため、あらかじめ対策を考えておくことが必要です。

また、他の業務システムとの統合をスムーズに進めるために、システムの互換性を事前にしっかり確認することも重要です。

RFIDシステムの導入を成功させるためには、綿密な事前計画と信頼できるベンダー選びが欠かせません。ぜひこの記事を参考に計画を立ててみてください。

導入にあたってご不安がある場合は、「株式会社エスケーエレクトロニクス」までお気軽にご相談ください。