物流・製造・小売の活用事例も含めて解説

物流業や製造業をはじめ、あらゆる業界でRFID導入が進んでいます。
RFIDを活用することで業務の効率性を大幅に向上させることが可能です。
また、DXの推進にも役立つ技術のため、その仕組みや活用方法について理解を深めておきましょう。

〈 はじめに 〉

今回はRFIDを導入するメリットについてわかりやすく解説します。
この記事では、物流・製造・小売りなどの業界のRFIDの活用事例(具体例)もご紹介していますので、RFID導入前の情報収集にお役立てください。

〈 リアルタイムトラッキングと監視 〉

RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波を利用してICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術です。管理したいモノや人にタグを装着し、リーダライタとアンテナで検知することにより、リアルタイム追跡やトラッキング、監視が行えるようになり、位置情報の特定や追跡をすることが可能です。

1.リアルタイム追跡

リアルタイム追跡

RFIDを導入することで、倉庫内や工場内のモノや人の位置情報リアルタイムで追跡することが可能で、これらの情報はアプリやシステム上で把握できるようになります。
モノや人の現在の位置情報を把握できることでこれまで発生していた探索時間を大幅に削減できます。

〈リアルタイム追跡で可能になること〉

このようなリアルタイム追跡は、ロケーション管理の効率化にも有効です。

入庫状況の把握が可能になります。どこに何を置いてもシステム上で把握できるため、限られた保管スペースを有効に活用できます。

また、扱う商品が入れ替わる度にロケーションを見直す必要がなくなり、商品の保管場所を覚える手間も省けます。
これにより、経験の浅いスタッフでもスムーズに作業を進められるメリットがあります。

これまで、フリーロケーション方式は在庫数を把握しづらく、紛失や盗難に気づきにくいと敬遠されていましたが、RFIDのリアルタイム追跡を活用することで、このような課題を解決することができます。

2.トラッキングと監視

トラッキングと監視

RFIDを導入することで、倉庫内や工場内のモノや人の動きをトラッキングすることが可能になります。
これにより、工程管理を見直し業務効率化を図ることができます。

〈トラッキング監視で可能になること〉

例えば、出荷前の検査工程を可視化したい場合、製品にRFIDタグを取り付け、作業チェックシートを添付することで、作業進捗をリアルタイムで把握することが可能です。
得られたデータを基に、各工程の着手や完了実績、滞留時間などの確認を行うことで、どの工程に問題があるかを洗い出せるようになります。

同じ原理を応用したRFIDソリューションとして、商品の万引きなど不正行為を検知した際に警報を鳴らすアパレルや書店向けのシステムも近年では多くの店舗で導入されています。
このようなRFIDソリューションを活用することで、防犯・セキュリティ対策を強化することが可能です。

〈 業務効率性の向上 〉

RFIDは複数のタグを一括で読み取ることができる強みがありますが、通信距離が長いUHF帯タグを使用した場合、遠距離にあるタグを読み取ることも可能です。
このような強みを活かすことで、さまざまな業務効率性の向上に繋がります。

1.在庫管理の精度向上

在庫管理の精度向上

RFIDを導入することで、さまざまな在庫管理の精度向上が期待できます。
以下にその具体例をいくつか挙げます。

  • <ヒューマンエラー防止>

    ヒューマンエラー防止

    入庫時に荷物のタグ情報を一括で読み取ることで、数量のカウントミス、入力ミス、転記ミスなどのヒューマンエラーを防止できるようになり、実在庫数とデータ上の在庫数の乖離に悩まされることがなくなります。

  • <出荷ミスの防止>

    出荷ミスの防止

    出庫時に荷物のタグ情報を一括で読み取ることで、類似商品の取り間違いや期限切れ商品の誤出荷をチェックできるようになります。

  • <リアルタイム在庫確認>

    リアルタイム在庫確認

    お客様から電話で商品の注文が入った場合など、リアルタイムで在庫状況の確認ができるため注文受付がスムーズになり、RFIDの導入によって在庫管理の精度が向上できます。

2.物流管理の効率化

物流管理の効率化

RFIDを導入することで、お客様へ商品を届けるための物流管理を効率化できます。
例えば、これまで目視やハンディターミナルなどを使って一つずつ検品していた作業を、RFIDで一括検品すれば作業時間を大幅に短縮できます。

  • 出荷作業の効率化

    出荷作業の効率化

    お客様から注文後、出荷準備(ピッキング・検品・梱包・流通加工)に時間をかけず、即日配送に対応するなど工夫すれば顧客満足度を向上させることが可能です。

  • 配送管理の効率化

    配送管理の効率化

    RFID配送管理ソリューションなども登場しており、配送トラックにRFIDゲートを取り付けた上で、配送ドライバーが荷下ろしを行うことで、物流管理者はアプリやブラウザ上で荷下ろしのし忘れがないかを確認できるようになります。

  • 配送ミスの防止と効率化

    配送ミスの防止と効率化

    トラック荷台の荷物が隙間などに隠れてしまうことで、荷下ろしのし忘れなど、配送ドライバーのミスを防ぐことが可能です。
    このようにRFIDを活用することで、お客様に商品をスピーディー且つ確実に届けられるようになります。

3.ロジスティック・サプライチェーンの最適化

RFIDのリアルタイム追跡やトラッキングで、ロジスティック・サプライチェーンの最適化を図れます。

サプライチェーン最適化とは、原材料の調達から消費者に製品が届くまでのプロセスの効率を高めることを指します。
最適化に向けた課題を改善するためには、サプライチェーン全体を把握する必要があります。
RFIDを導入すればモノや人の動きを追跡でき「いつ」「誰が」「どこで」「作業したか」を把握できるため、サプライチェーンの最適化を効率的に進めることができます。

〈 労力とコストの削減 〉

RFIDは複数のタグを一括で読み取ることができるとお伝えしましたが、それだけに留まらず、梱包箱の中の商品タグも読み取ることができます。
タグは汚れに強いため、読み取りエラーも発生しにくく、このようなRFIDの利点を活かせば、労力とコストを削減することが可能です。

1.手入力ミス削減と不正確な在庫記録の防止

  • RFIDを活用することで手入力ミスを削減できますが、その理由として、RFIDは複数のタグを一括で読み取ることができ、さらに重複やカウント漏れを防ぐことができる点が挙げられます。

    <バーコード運用との違い>
    バーコードの場合、カウント漏れや重複カウントが発生しやすく、その原因はバーコードを一つずつスキャンする作業が負担となることや、バーコードは汚れに弱くスキャンエラーが起きることなどが挙げられます。

    このような要因により、実在庫数とシステム上の在庫数との間に乖離が生じることがありますが、こうした問題もRFIDを導入することで解決が可能です。

    手入力ミス削減と不正確な在庫記録の防止

2.手作業の削減

  • RFIDを導入することで業務の自動化が図れ、手作業の削減につなげることができます。

    例えば、倉庫や工場の出入り口にRFIDゲートを設置すれば、入出庫業務の完全自動化が可能になります。
    また、保管棚にRFIDアンテナを設置することで棚卸業務の自動化も可能です。
    さらに、スタッフの出退勤管理のためRFIDゲートを設置することで自動化することも可能です。

    手作業の削減

3.従業員の負担軽減

  • RFIDを導入することで業務効率化も促進され、従業員の負担軽減にもつながります。

    先ほども説明しました通り、バーコードとは異なり複数のタグを一括読み取りするだけでも作業者の負担は軽減されます。さらに、ダンボール箱に入っている商品のタグも読み取ることができるため開封作業の削減ができます。

    その他、手の届かない場所に保管している商品タグも読み取れるため、棚入れや棚戻しの作業が不要となり、重労働を回避できます。
    これにより、スタッフにとって働きやすい環境作りに繋がります。

    従業員の負担軽減

〈 データ管理と分析機能の向上 〉

RFIDタグを管理したい商品などに装着し定期的に情報を取得することで、「位置情報」「日付/時間」「状況」に関するデータを収集・蓄積することが可能です。
これにより、大量のデータを蓄積できるだけでなく、ビッグデータに基づいた意志決定も行えるようになります。

1.ビッグデータの管理と即時アクセス

ビッグデータの管理と即時アクセス

「位置情報」「日付/時間」「状況」に関するデータを定期的に自動で取得できるようになります。
こうして収集されたデータを継続的に集計・蓄積していくことで、ビッグデータとして活用できるようになり、データに基づいた意思決定が可能になります。

RFIDの大きな特長の一つはリアルタイム追跡が可能になる点です。
お客様から状況確認を受けた場合でも、RFIDソリューションを活用することで、現在の状況を即座に回答できるようになります。
また、過去の履歴などを併せて説明できるようになるため、お客様に安心感を与えるとともに、信頼性という付加価値の提供にもつながります。

2.パフォーマンスのモニタリングと分析

パフォーマンスのモニタリングと分析

RFIDのトラッキングと監視を上手く活用することで、パフォーマンスのモニタリングと分析が行えるようになります。

各工程の着手や完了実績、滞留時間のデータを取得する事により、どの工程に問題があるかを洗い出せるようになります。
例えば、各工程の滞留時間を比較することで、どこからDXを推進すべきか判断が下せるようになるでしょう。
また、同じ工程でもスタッフにより作業時間に差があるかどうかも検証できるようになります。

このようにパフォーマンスのモニタリングや分析により、効率的な作業工程の検証、改善を行うことが可能になります。

〈 まとめ 〉

いかがでしたでしょうか?

RFIDを導入することで実現できる具体例やメリットをご紹介しましたが、RFIDはヒトやモノの動きをリアルタイムで追跡・トラッキングが行えるため、業務プロセスの可視化に役立ちます。

業務プロセスを可視化することで問題を特定できるようになり、最適化を図ることで物流業務や生産管理業務などの効率化にも役立てられる画期的な技術です。

RFIDは多岐に渡り活用方法があるため、物流会社や製造会社、医療機関など、さまざまな業界にてRFID導入が始まっています。RFIDに興味・関心を持った方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。